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FMS/SFMAのスポーツ現場での応用
-FMS/SFMAイントロ&若手セラピスト・トレーナーへのアドバイス-
日時:12月1日(日) 20:00-21:15
主催:株式会社Funcitonal/FMS Japan・Perform Better Japan
方式:オンライン
【講師】
・中山 直人 (ヴィッセル神戸アスレティックトレーナー・鍼灸按摩マッサージ指圧師/JSPO-AT)
・中村 有希(ガンバ大阪フィジオセラピスト・PT)
・上松 大輔 (名古屋グランパスパフォーマンスコーチ・FMS JAPAN
・Functionムーブメント&フィジカルクリニック代表)
概要
FMS/SFMAは決してスポーツに限定されたモデルではありませんが、サッカーを中心とした多くのスポーツ現場で使用されています。今回のセミナーでは、スポーツ現場におけるFMS/SFMAの応用について、サッカーのトップレベルの現場で活躍するコーチ・トレーナーをお招きして、”現場の実際のところ”をお話しいただきます。
テーマはFMS/SFMAに限らず、スポーツの現場にトレーナー・セラピスト・コーチとして具体的な活動内容から苦心している点、またこれまでのキャリアパスなど実際に現場に立っている方から、これからスポーツ現場に立ちたいと希望されている若手セラピスト・トレーナーへの参考となれば幸いです。
本セミナーを企画した背景
サッカー、バスケをはじめとした世界のトップリーグにおいて、稼働率をあげることは、フィジカル・ストレングス&コンディショニング及びメディカルスタッフにとって最大のフォーカスとなって久しく経ちます。またこの傷害予防の達成には、この2つの専門領域をいかに統合するか、協働するかが重要なことは言うまでありません。
また、90後半から00年代初頭にかけて、トレーニング≒リハビリテーションという考えが普及し、米国などでは、デュアルクレデンシャル(Dual Credential・トレーニングと医療の資格の両方を保持すること)が増えたり、まはた両セクションを統合するディレクター職を配置し、シームレスなサービスを提供しようする動きがあります。
残念ながら、国内のおいてはその要となる治療、リハビリテーション、フィジカルへの連結をうまくオーガナイズできる人材、言い換えれば、治療ベッド、ジムエリア、ピッチと主たる活動場面で区別した時に、ジム内のサービス・セッションをうまく回せる人材の不足感は強く、またその変化の兆しも乏しいことがあり、今後のこの世界を目指す若手の皆さんへの情報提供を一つの大きな目的としました。
スピーカーは、FMS/SFMAの応用という観点だけでなく、この問題点をしっかりと理解し、解決策を提示しているお二人をお招きしました。
各セクションショートムービー
①上松
②中山氏
米国の4大スポーツだけでなく、欧州サッカー現場でもすでにスタンダードとなっているFMS
セミナーリポート by Perform Better Japan
日頃よりパフォームベタージャパンをご愛顧いただきましてありがとうございます。
今回は、先日開催したFMS JAPAN様とのコラボウェビナーの内容の一部をご紹介いたします。
現役のチームスポーツのトレーナー、コーチをお招きして、現場でどのようにFMSを活用してチーム内の連携を図っているかなどを具体的にお話しいただきました。
そもそもFMS/SFMAとは?
1990年代半ばからリハビリテーションやトレーニングにおける「動作の重要性」に着目して開発が進められてきた理論で、その基盤となる原理・原則は、 身体部位の相互依存性、運動制御・学習、神経発育や発達に基づく動作評価にあります。 また、医療モデルからフィットネスやトレーニングモデルまで幅広く対応できる点が大きな特徴です。
現在、FMSとSFMAは世界40か国、16言語で展開されており、これまでに約10万人が資格を取得。
アメリカでは、 米軍や4大スポーツリーグとパートナーシップを結んでいるほか、消防や警察、一般企業など多様な分野で活用されています。
FMS/SFMAについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
https://www.functional-inc.co.jp/fms-japan/about-fms-sfma/
中山 直人さんの活用方法
ヴィッセル神戸のアスレティックトレーナーを務める中山さんは、2015年にアメリカのトレーニング施設「EXOS」の日本人向けメンターシッププログラムに参加。 そこで、EXOSがFMS(Functional Movement Screen)を包括的な選手評価システムに組み込んでいることを知り、ムーブメント(動作)の改善の重要性を学ばれました。以来、サッカーの分野で「ムーブメント」を軸に、メディカル・コンディショニング担当として活動を続けています。
中山さんには、 これまでに携わった異なる環境の3つのチームでのFMS/SFMA(Selective Functional Movement Assessment)活用事例をもとに、それぞれの実践方法と学びについてお話しいただきました。
今回は、FMS/SFMAの活用歴が長い中山さんが考える、FMS/SFMA導入の「キーポイント」と「意義」についてご紹介します。
FMS/SFMA活用のポイント
1.パフォーマンス部門に仲間を作る
FMSの価値をパフォーマンス部門と共有し、協力することで「1+1=2以上」の効果を引き出す。
2.評価で終わらない
「評価 → フィードバック → コレクティブ」のサイクルを継続することで、選手にとって効果的な介入が可能になる。
3.コレクティブの精度を高める
選手自身が効果を実感できることが最優先。
サイクルを継続させるためには、選手やチームの理解が欠かせない。
そのため、 まず選手に結果を示すことが重要。
FMS/SFMA導入の意義
1.痛みや主訴のない選手への評価が可能に
動作や機能を包括的に評価できるため、 予防・リハビリ・パフォーマンス向上まで幅広くカバー可能。
2.他職種間の共通認識が得られる
客観性の高い評価で情報を共有しやすく、信頼関係や組織力の向上につながる。
3.個人のスキル向上
動作と機能を評価する「目」と、機能改善を達成する「腕」が鍛えられ、 介入の精度向上につながる。
個人と組織、双方で結果を出すために
選手との対話から個々の特性やコンディションを主観的に感じ取る一方で、 客観的な評価システム(FMS)を取り入れることで、チーム全体としての組織力と個々のスタッフのスキルの両方が向上させることができます。
中村 有希さんの活用方法
ガンバ大阪のフィジオセラピストを務める中村有希さんは、急性期病院で脳卒中、循環器、整形外科の分野に携わりながら、大学サッカーのサポートも行われてきました。 2018年にはFC東京での活動を開始し、2024年からはガンバ大阪で新たな活動を展開しています。
中村さんには、チームで実践している事例を実際の数値を交えてご紹介いただきました。
今回はその中から、 中村さんが「FMS導入前の課題」と「FMSを選んだ理由」についてご紹介させていただきます。
FMS導入前の課題
1.予防の観点の浸透が課題
スポーツ現場では、プロ・アマを問わず予防の重要性が十分に理解されていないケースが少なくない。
多くのチームでメディカルチェックが行われている一方、動作評価が取り入れられていない、または効果的に活用されていないのが現状。
2.評価項目の非効率性
予防評価の方法を検討する中で、身体特性や傷害との関連を基に多様な評価項目を試したが、 評価項目が多岐にわたりすぎて効率が悪くなり、現場での実践が難しいという課題が浮き彫りになった。
3.怪我人の多さが生む課題
怪我人への対応に追われることで、チーム全体への質の高いサポートが提供できないという状況が続いていた。
そのため、怪我人を減らし、 効率的に予防に取り組む仕組みが必要だと強く感じるようになった。
FMSを選んだ理由
FMSの大きな強みは、選手の動作を評価して状態を可視化し、 そこから具体的な介入につなげられる点にあります。
この評価システムを活用することで、怪我の予防と動作改善を効率的かつ実践的に両立できると考えFMSを選びました。
「テスト・スクリーン → 機能不全の特定 → 適切なエクササイズの実施 → 再テスト」
FMSは上記のようなシンプルで実践的なプロセスが特徴です。
これにより、客観的に動作パターンの問題を明らかにし、効果的なアプローチが可能になります。
評価にかかる時間はわずか10~15分。この短時間で得られるリスク評価やアプローチの指針を考えると、非常に有用なシステムです。むしろ、テストを実施しないことによるリスクの方がはるかに大きいと実感しています。
FMSは、現場で欠かせない重要な評価システムです。
今回のレポートでは、プロサッカーチームの現場で活躍されている両名から現場のリアルをご紹介させていただきました。
これからスポーツ現場に立ちたいと希望されている、 若手セラピスト・トレーナーのみなさまの参考となれば幸いです。