労災予防 x FMS
1990年後半に、FMSが学会やカンファレンスで公表され、2004年にセミナー化される前に米国内で広がった要因は、それを導入した米軍とNFLのチームの傷害が激減したという点はよく知られている事実であり、インディアナコルツ、シアトルシーホークスなどはその代表例です(シーホークスの取り組みはこちら )。これらの現場での成功を受けて、セミナー化されていったという経緯があります。
その後、さらにこの流れを加速した点のひとつに、消防士や電力会社などでのブルカラーの労働現場での労災・傷害予防での実績があるされ、現在はさらに広く普及しています。
写真:Denver Postより引用
動画はカリフォルニア州の消防局におけるFMS測定風景
消防士へのFMSの介入に基づく結果などについては、学術論文も公刊されているため、下記はコロラド州デンバーの消防局での取り組みに対する地元新聞Denver Post誌の2016年の記事の抜粋・日本語訳です。
( )内は弊社付記です。また、文末にFMSがNFLのために開発されたという表現がありますが、これは、Denver Post誌の事実誤認です。
以下抜粋
「デンバー消防局では、この(FMSを通じた評価、介入)プログラムの開始以来、労災請求が42%減少しました。
初年度、同局は、職業上の怪我の原因として過労(慢性障害)による労災請求が減少し、腰、肩、膝などの怪我の治療費も減少したと報告しています。また、腰や肩、膝などの怪我の治療費も減少しています。同局の統計によると、このプログラムで対応した主な労災治療費は、初年度に42%減となりました。
デンバー消防局のヘルス&ウェルネス・コーディネーターであるショーン ブルックス(理学療法士) 氏は、「我々は(傷害予防に)非常に積極的に取り組んでいます」と語ります。「私がやりたいことは、消防士をプロのアスリートのように扱うことです。」
(中略)
「消防局では、傷害予防と、傷害発生時の早期回復を目的としたパイロットプロジェクトを実施した2年後に、ウェルネスプログラムを開始しました。ウェルネスプログラムは、フィットネスと行動衛生をカバーしており、消防署の職員であるブルックスと2人の理学療法士によって運営されています。
現在では、デンバー警察をはじめとするデンバー市政府の他の部署も、同様のプログラムを従業員に適用することに関心を持っています。」
(中略)
「このウェルネスプログラムは、消防署の全員が対象で、新入隊員はアカデミーの初日にこのプログラムに参加する。ブルックス氏と彼のスタッフは、NFLのために開発され、現在ではスポーツ界で広く使用されている7つの機能的動作テストによって、すべての新入社員を評価する。これらのテストはNFLのために開発されたものだが、現在ではスポーツ界で広く使われている。ブルックス氏によれば、これらのテストは、消防車に乗ったり、重い機材を背負ったり、重さが数百キロもある水の入ったホースを建物に向かって引っ張ったりする消防士に適応しているという。」
以上、引用。
FMSは競技スポーツ、レクリエーショナルスポーツ、フィットネスであれ、労働であれ身体運動に従事する人の骨格筋のリスクをマネジメントし、介入の優先順位を提供する包括的なシステムです。その効果は、300を超える原著論文だけでなく、システムを導入した数多くの現場の実績によって裏打ちされており、学術的な研究はむしろ、その効果のメカニズムを解明しようとしているものといってもいいかもしれません。
動作評価を導入する目的は数多く存在しますが、文中の理学療法士のようにな医療資格者にとって、症状を有していない患者に対する介入を決定する上でも非常に大きなツールとなり得ます。