Paleo Plus: 食事とエクササイズ再考

 

by Gray Cook

 

 

 私はしばしば栄養と運動を並列におき、比較してきた。運動が常に約15年遅れていることを除いて、現代の運動・エクササイズの進化と発展は、栄養のそれとミラーリングすると信じている。私は、栄養の最新動向を把握し、熟読し、知見を深めることを好んできた。とはいえ、私たちの文化において最も先進的な栄養アドバイザーは、歴史的に表現され、かつ単純に実用的な、ある一定の原則に基づいて行動していると思う。マイケル・ポーラン( Michael Pollan)のように。

 

 新しい方法論は、これらの原則とうまく調和している限り、何かがあると思っている。人間の代謝や内外の環境との相互作用のような基本原理を無視して栄養学に取り組むと、「フリーサイズ」あるいは「魔法の弾丸」のような戦略を推進することになる。そしてまた、スタイルと物質の両方において、私たちがより自然な、あるいはホリスティックな食事を守ろうとすると、より良い結果が得られるだろう。何を食べるかだけでなく、いつ、どのように食べるかも重要なのだ。システムのバランスを整えるという点では、断食は何を食べるかと同じくらい重要なことかもしれない。

 

 体内に入れるものは非常に重要だが、それをどのように体内に入れるかということも、同じくらい重要である。

 

 私は、パレオダイエットやライフスタイルでしばしば唱えられるような、”除去(引き算)の芸術”(the art of elimination)に向けられる近年の注目・関心が好きだ。除去食への関心が、マーケティングにも変化をもたらしている。単にオメガ3や食物繊維が含まれているというだけではない。ホルモンや合成添加物、染料、グルテン、トランス脂肪酸が含まれていないことをアピールするようになった。

 

(訳者注:パレオ旧石器時代(Paleolithic Era)の野草と野生動物を中心とした食生活を真似ることを主張する食事・ダイエット法のひとつ)

 

 80年代から90年代にかけて、栄養学のトレンドはサプリメントにあると思われていた。誰もが、食材が十分でないこと、十分な食材を準備するのに時間がかかることを認め、サプリメントが正当化されるようになった。そして、シェイクやビタミンパック、クレアチンなどが登場した。サプリメントには効果があるように思われ、研究が進んだ(そして今も続いている)。私たちは、明らかな欠乏症、あるいは食生活の乱れがある人にサプリメントを与えると、どんなサプリメントも、本当は欠乏症を満たしているだけなのに、効果があるように見えてしまうことを学んだ。それは、マイナスを取り除くことはできても、プラスを加えることはできない。

 

そもそも、なぜ欠乏しているのか?

 

 かつての考え方は、"ガラクタを取って良いものを足そう "というものだった。しかし、(願わくば)現代の流れは、本物を見つけて、不要なものは全て排除しよう、というものだ。残念なことに、それは欲とマーケティングに帰結する。私たちが何を求めているかを知ると、彼らは私たちの好奇心を満たすために、安くてあまり健康的でない方法を考え出す。

 

マイケル・ポーランは、その著書の中で、(私の言い換えであるが)「できるだけきれいな地元の食材を使った本物の食品を食べ、自分が一番おいしいと感じるレベルの多様性を楽しもう」と簡潔に述べている。パレオの食事法の根底にある現実の一つは、地元産でない、本物でない、非常に多くの食品を排除することだ。

 

運動・エクササイズや動作への教訓はあるだろうか?

 エリプティカル マシンが登場したとき、私はすでにフィットネスとリハビリの専門家だった。多くの同業者は、これらの機器では臀部の活動が20%ほど高い一方で、インパクト・衝撃がないという事実に飛びついた。インパクト・衝撃に弱い人や、テレビを見ながら静止した場所で運動したい人には最適の運動方法だったが、エリプティカル・マシンはトレッドミルやステアステッパーとは違う何かを提供した。

 

 それは、私たちをより良くしたのか?エリート・ランナー、健康なハイカー、優れたクロスカントリー・スキーヤーやサイクリストは、エリプティカルの登場によって生まれたか?それとも、補助輪を付けて歩けるようになっただけなのだろうか?私たちは代謝負荷という一時的な利益を得たが、よりまっすぐに立ち、よりきれいな歩幅で、より少ないバイオメカニクス的エラーで歩くことができたのか?

 

これは、そのような疑問に答えるための記事ではない。疑問を投げかけるための記事である。

 

 アトキンスダイエットやサウスビーチダイエットを覚えている人であれ、パレオのファンである人であれ、それらのダイエット法は、いずれも足すよりもはるかに多くのものを排除するよう求めている。私たちの多くは、毎日パレオ食品を楽しんでいる。しかし、パレオフードを包んだり、その前後に置かれたりしているものが、問題を複雑にしているのである。合成食品、余分な穀物、質の悪い乳製品、精製された砂糖、エネルギー補助食品への依存など、すべてが問題を複雑にしている。

 

 追加されるものか、排除されるものによってなのか、パレオ・アプロのーチが実際どのように役立っているのはわからないが、常識的に考えば、負荷の排除の方が追加よりもはるかに大きいだろう。新しい食品が導入されているわけではない。ただ、合成調味料を減らし、より主食らしくしているだけである。パンのないサンドイッチはミートサラダと呼ばれる。現在の栄養学は、合成食品の排除と習慣的な間食の排除の両方が私たちの助けとなると教えてくれていると思う。間歇的な断食は、調理を必要とする本格的な食事とともに、あなたの人生をより豊かなものにしてくれる。さらに、チート・デイのような心理的なボーナスも加われば、ダイエットというより、クールな生き方のように感じられる栄養ライフプランへの道が開けるかもしれない。

 

エクササイズもそのような状態にできたらいいとは思わないか?

 

 話は、ダイエットからエクササイズへ。運動にも、栄養学で説明したような一般的な良い道がある。しかし、この栄養学的な道筋がすべての人の役に立つわけではない。なぜなら、私たちの中には欠乏している人がいるからである。この欠乏は、必ずしも全食品が不足しているからではなく、遺伝、環境、ストレスレベル、年齢によって、栄養素やビタミンの吸収率が異なるからである。

 

 運動・エクササイズも同じではないだろうか?吸収率には差があるかもしれない。ある人はケトルベルスイングで体重を失い、ある人は腰を失う。素晴らしい食事習慣を実現するためのプロセスは、どのようなものだろうか?

 

 まず、自分に欠乏症がないかどうかをチェックし、確認する。おそらくほとんどの人が、どこかに欠乏症を抱えているはずである。そして、一般的な原則をできるだけ多く守ることだ。約8~10週間後に、それらの欠乏を再確認し、良い一般的なアプローチで問題が解決されたかどうかを確認する。中には、まだ問題が解決されていない人もいるだろう。一般的な栄養摂取の原則に加え、持病やその他の要因で重要な栄養素の自然な吸収が妨げられ、補足が必要な場合もある。

 

 このステートメントはファンクショナルエクササイズ・運動にも引き継がれる。FMSやその他の評価によって、自分が機能的でないことがわかったら、まず、機能的動作の一般原則に従がう。私たちはそれぞれ、問題を引き起こす可能性のある運動や活動について、かなり良い考えを持っていると思う。

 

 ワークアウト後に、中には痛みを伴うものもあり、私たちが心地よいと感じる通常の筋肉疲労をはるかに超えるような痛みやつっぱりを感じるものもある。もしかしたら、これらはレッドフラッグかもしれない。私たちの身体が、その体験が過剰だったといっているのか、または実際に見えていたよりもずっとよりも代償していたと、伝えているのかもしれない。

 

 残念ながら、私たちはエクササイズの進化において、まだ(栄養の)1980年代や1990年代の段階にいる。私たちは、より良い機能を簡単に生み出すことができる一般的な原則に従う前に、一貫してサプリメントを追加することを求めている。もし、そのような一般的な原則に従ったとしても、良い経験・結果が得られない場合は、コレクティブエクササイズが実施される。コレクティブエクササイズとは、私たちが吸収率を高めたりするためによく使うプロテインシェイクやマルチビタミンに相当するものである。

  

 残念ながら、FMSやその他のファンクショナルエクササイズを実践することが、ワークアウトから何かを排除するよう求めることから、悪者のレッテルを貼られているのを目にすることがある。何かを排除することには、論理的な理由が2つある。

 

 まず、それを排除してすべてがよくなるのであれば、何かを学んだことになる。2つ目は、もしそれを排除しても何も変わらないのであれば、それもまた何かを学んだということだ。

 

 学ぶことへの恐怖はどこにあるのか?スポーツパフォーマンスやストレングス&コンディショニングで一番怖いのは、何らかの理由でパフォーマンスの優位性が失われることだと思うが、どのようにしてか?

私たちは、パフォーマンスを妨げる環境因子のすべてを把握できるほど頻繁にパフォーマンスをテストしているのか?

 

 パフォーマンスに真剣に取り組んでいる人の多くは、ある特定の場所でピークを迎えるように計画している。つまり、そのパフォーマンスをグラフで追うことは非常に簡単である。もし、もっと機能的なアプローチをとって、パフォーマンスの大きな落ち込みに気づいたとしても、その落ち込みをグラフ上のほんの一点にとどめるように、素早く対処することができるはずだろう。

 

 オーセンティック・本物の動作と優れた機能的ベースを取り戻すためにパフォーマンスの時間(トレーニングの時間)を放棄することへの恐れは、客観性の欠如と頻繁なテストの欠如から来るものだと思う。もし私が、あなたの目標達成やすべての目標達成に役立っていないのであれば、真っ先に私が知ることになるだろう。私は体系的かつ客観的な方法で測定している。これは例外ではなく、ルールであるべきだ。私は、特定のエクササイズを廃止することを正当化し、また、同じ時間であれば、一般的な身体的準備や特定のスキルあるパフォーマンスにおいて、より大きく、具体的な効果をもたらす新しい機能的な動作や修正を導入するためのデータを持っている。

 

 さて、ここでタイトルの「パレオ」だが......。プラスというタイトルはここから来ている。パレオのような除去法のルールに従って、良い結果が得られたなら、喜びや利便性、何かを楽しみにするようなものを再び取り入れてもよい。それを時々、あるいはチートデイのような形で取り入れるといいだろう。。

 

 私はできる限り、ローカル(Local)/ホール(Whole)/シンプル(Simple)/パレオ(Paleo)を食べるようにしている。アイスクリームを一杯食べたい、ピザを一切れ食べたい、すごく塩辛いポテトチップスが食べたいと思ったら、それもやる。食べ過ぎていることに気づいたら、少し減らす。除去的食事法と並行して、少しズルをして少しプラスすることで、ほぼ同じ結果が得られるのなら、それはそれでいいことだ。

 

 このアドバイスを、あなたの運動プログラムやクライアント、アスリートたちに伝えてほしい。そのアドバイスを、リハビリを終えてアクティブなライフスタイルに戻ろうとする患者さんに伝えてほしい(願わくば、すべての怪我からの教訓を全て学んだ上で)。

 

 「この怪我を防ぐため、あるいは少なくとも重症度を軽減するために何かできただろうか?」場合によっては、『いいえ』と答える一方で、「怪我は避けられなかったが、リハビリの過程で露呈した他の15個の問題があるために、リハビリに時間がかかってしまっている」と自分自身に言い聞かせることもあるだろう。

 

 栄養計画における消去法の目的は、現在の環境において競争優位に立つことであることを忘れないでほしい。あなたは、筋肉を維持し、引き締まった体を作り、より多くのエネルギーを得たい。何かを除去することでそれが可能になるのであれば、それは競争上の優位性であり、パフォーマンスの向上となる。

 

 機能不全に陥った動作パターンを一掃すれば、その効果は広範囲に及び、停滞していた多くのパフォーマンス指標を変えることができる。しかし、見てみなければ分からないし、最初にテストしてみなければ、再テストもできない。

 

・動作とパフォーマンスのベースラインを設定する。

・補足的エクササイズや身体の一部だけを使うような運動は排除する。

・走る、跳ぶ、運ぶ、登るなど、まず全体の動作パターンを取り入れる。

・体が硬ければ、まず呼吸をし、健康になる。その次に、動けるようになる。

・ストレングスがないのであれば、物を運び(キャリーし)、持ち上げる(リフトする)。

・動作パターンを獲得する。まずはシンプルでベーシックに。最初は負荷をかけず、次に負荷をかける。常・に健全性を維持して。

・自分の身体と動きのパターンが変化するのを見る。

・あまり意味のないもの、補助的と思われるものを排除する。ベースラインテストに対して、どれだけ良い状態になるかを見る。

 

 パフォーマンスと考えるもの、パフォーマンスではないと思うことについて、無条件に発言する言い訳ができなくなるように、パフォーマンスを見る。パフォーマンスの第一条件は参加であり、もしあなたが怪我をしているなら、今日のあなたは参加者ではない。

 

 シンプルでベーシックな、全体のエクササイズプログラムを楽しもう。自分のものにしたら、プラスアルファの楽しみを加えよう。...あなたはそれに値する!