成人、子供のFMSスコアの標準値とは
FMSに関する論文は、2024年9月時点で、Pubmedで検索できるものだけでも300を超えており、かなりの大きさのエビデンスが蓄積されつつあります。
成人のクライアントを対象として運動指導をおこなっている人が多くいるかと思いますが、個々のクライアントの動作のベースラインを知ることは最も重要なことですが、そのクライアントの年齢、性別、その他の属性に合わせた標準値を知ることも、個々のクライアントのスコアを解釈する上で重要なステップとなります。
Perryらが、622人の男性成人を対象に行った調査で、図のような標準値関するデータを示しています。
20-39歳 14.79±2.76
40-49歳 14.85±2.58
50-54歳 14.03±2.9
55-59歳 13.64±2.68
60-64歳 12.98±2.67
65+歳 12.56±3.27
さらにデータの分析によって、興味深い点がいくつか示唆されています。
・FMSのスコアが、BMIと年齢は負の相関を持ち、身体活動レベルとは正の相関を有している。よって、BMIが低く、若いクライアントはFMSスコアが高いことが予期され、一方、身体活動レベルが高いことはFMSスコアが高くなることが予期される。
・FMSスコアは身体活動量と最も強い相関を持ち、次に、BMI、最後に年齢と有意な相関を有している。
・FMSは、年齢とBMIの影響を除外したととしても、身体活動量と有意な相関がある。
・これら年齢、BMI、身体活動量の3つの因子はFMSスコアに影響を与えるものの、これらはスコアの分散の24%を説明するに過ぎないことから、これら年齢、BMI、身体活量はFMSスコアに有意に影響するが、他の因子・変数は数多く存在する。
・BMIのカット値を(肥満とされる)30とした時、BMI 30以上だった人(全体の13%)はFMSスコア12.45±2.91となり、BMI 30以下だった人(全体の87%)FMSスコア14.39±2.76よりも、FMSのスコアが有意に低い。
FMSのスコア(動作の質)が、年齢やBMIよりも、身体活動により強い相関を持つという点も興味深い事実であり、個体としての制約の一つであるBMIが動作に影響を与えているという事実も納得がいける点です。
またSchneidersらが行った同様の研究で209人の大学生年代人(21.9±3.7)を対象とした研究では、以下のことも示唆されています。
・トータルスコアの平均は、女性が15.6、男性が15.8となり、有意差は存在しない。
・参加者の31%に相当する65人(男性29人、女性36人)は、トータルスココアが14点以下である。
・ASLR、SM、TSPU、RSは男女間で有意な差がある。
Abraham AGが2015年に行った1005人(男子548人、女子457人)の10〜17歳の青年期の被験者を対象とした研究では、以下のことが報告されています。
・男女を合わせた平均値は14.59となり、男子のみでは14.93、女子のみでは14.17となり、男女の間で有意な差がある。
・トータルスコアは年齢と非常に弱い相関があり(r= -.038, p=.225)、身長(r= .065, p= .040)や体重(r= .103, p=.001)とも、トータルスコアとの弱い相関がみられる。
また論文中、特別な記述はありませんが、TSPUは36%も1点を記録していたのに対し、DSとSMはそれぞれわずか3.2%と2.7%が1点を記録していたことも特筆すべき点かと思われます。
これらのデータをどのように解釈し、診療・現場へ生かすかは我々次第となりますが、共通言語に基づいた動作についての議論を促進したいというFMSのミッションはしっかりと果たされていることを実感できるリサーチです。
未成年の研究では、FMSスコアの性差や年齢の差が存在し、肥満との関係などが示唆されるものもありますが、それらは別の機会に紹介したいと思います。
Refrence:
1. Perry F et Koehle MS. Normative data for the functional movement screen in middle-aged adults. J Strength Cond Res. 2013 Feb;27(2):458-62.
2. Schneiders AG. et al. Functional movement screen normative values in a young, active population. Int J Sports Phys Ther. 2011 Jun;6(2):75-82.
3. Abraham A. et al. Normative values for the functional movement screentm in adolescent school aged children. Int J Sports Phys Ther. 2015 Feb;10(1):29-36.